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こんなお揃い嫌△

2014/11/03 09:48

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 ううっ、エリオさんが非常に大変な事になっている!
 これはすぐに助けるべきなんだけど、なんというかその……つい見てしまうというか。
「エロっ……じゃないや、エリオさんを放して!」
 ダメダメ、危うくエロオさんと言うところだった。本人に非は無いのだが、手首だけで宙吊りにされて足首や膝に巻きついた髪の毛がこれ以上無理ってほど脚を広げててびみょーにその下の様子とか布越しにわかっちゃうし、逃れようとしてるんだろうけど腰を動かして身を捩る様子がとてつもなくエロいんですけども。どんだけ伸びるんですか髪の毛。もはや別の生き物だ。魔族ってすごい。
「まあ良いではないか。二人で見ていような? 醜い男でもほれ、あのようになかなかの色気だぞ。魔王様の気持ちがわかるな」
 あの、肩を抱き寄せないで下さい。エリオさんは醜くないから困るんですっ! 綺麗な人があんな事になってるからっ。わー、股関節外れるしっ。首絞めたら駄目だしっ!
「く……あぁ!」
 い、色っぽい。何、その声っ。その表情。頭の中の禁断の扉が開いてしまいそうですうぅ! 私ってSっ気あったんだろうか。
 はっ。萌えてる場合じゃないって。
「やめて! エリオさんが死んじゃう!」
「我に刃物を向けた罪だ。どうせ殺そうと思ってるのだし? ああ、だがそうだな、ただ絞め殺すのも面白くないか。八つ裂きも味気ないな。もう少し辱めてやろうか。よおく見ておくのだぞ」
 ううっ、なんか私、地雷を踏んでしまったかも!
 とりあえず首を絞めるのも大股開きもやめてくれたけど、まだ手首も足も絡め取られたままだ。それに……辱めってえええぇ! やっ、そんな事になる前に何とかならないかな。そうだ、えっと今こそ魔法を使う時!
 ……ううっ、何もイメージ出来無い。というか、なんかデデルさんの手が触れてる肩から急激に力が吸われてる気がする。
 デデルさんがにやっと笑った。
「今何かしようと思っただろう?」
「はぁ……」
 ううっ、お見通しですか。これってとってもヤバイ状況な気がする。
「ユマ様に触るなっ」
 捕らわれたままのエリオさんが必死になって暴れているが、巻きついた髪の毛は外れそうに無い。
「うるさい」
 しゅるっと音を立てて、新しい毛束がエリオさんの口に巻きついた。
「お前はこの男を愛していると言ったな。だがまだ男の体も知らぬであろう? よく見ておくがいい」
 やー、見たくないと言えば嘘ですが、それはちゃんと手順を踏んでからでいいです。こんなの嫌だよぉ!
 とにかくこのデデルさんから離れないと魔法も使えない。
「んーっ、んー!」
 げっ。エリオさんが脱がされている! なんて器用な髪の毛なんだぁ! あれよあれよと言う間に上半身の服は引き裂かれ、ベルトは引きぬかれてズボンが落ちてっ……や、そのカボチャパンツだけは駄目ですっ!
「きゃーっ!」
 思わず目を覆ったが、指の隙間から見えました。下着も足首まで下げられるのが。
「ほれ、よくみてやりなさい。きっと男もお前に見られるのは嬉しいと思うぞ? なんなら私のも見せようか?」
 それは遠慮するっ! おっさんのは見たくないよ~と思っていたら今度は私の手首にも銀色の束が巻きつき、結構な勢いで顔から手を退けられた。
「……」
 エリオさんと目が合う。すぐに逸らされたけど。
 ……ゴメン、エリオさん。均整の取れた大変美しい体が見えました。うん、全部。そうですかー、子供の頃にお父さんの裸を見て以来です。若い男の人ってこういう風になってますかー。こんな時だけど美術館の彫刻のような体ですね。
 恥ずかしさからか、真っ赤になって涙目になってるエリオさんがなんとも言えずそそられ……じゃないし!
「うーん、やはり男の裸を見ても何も面白く無いな」
 デデルさん、良かったです。貴方がアッチの趣味がある方でなくて。それだけが今の僅かな救いです。
「やはり女の方がよいな」
 でっ?
 気がついた時にはもう遅く。
「きゃああああ!」
 ぶらーん。
 ぶら下がり人間二号になってますね、私も。ついでに口も塞がれてしまったよぉ。
「私も見たい……いや。ほれ、男よ。最後に良いものを見せてやろう」
 ひぃいい! 私もぬがされてるぅうう! 手も足も拘束されてると本当にされるがままなのね! エリオさんゴメン。ぼへーっと見てた私をゆるしてええぇ。
 エリオさんは顔を背けてたが、デデルの野郎の手が髪を強引に引っ張ってその顔をこっちに向けた。
「……」
 ああああ……見ましたね。思いっきり目を見開きましたねエリオさん。私も見てるんで一緒ですけども。あのですね、顔から火が出るほど恥ずかしいんですが、お、おそろいだねー、エリオさん。こんなおそろいヤダけどさ。
 じわっと涙が滲むのがわかった。
「ユマっ! 今ならデデルの手が離れてる!」
 リオちゃんの声が響いた。
 あっ、そうだ。今なら魔法を使えるかも。この巻きついてるのを切ればいいんだな。髪の毛だから……ハサミ出ろっ!
 じゃきん。とっても良い音がして、途端に足が床についた。
「髪がああああぁ!」
 あ、デデル床につっぷした。こんだけ器用な髪だって事はひょっとして痛い? 神経通ってたりするんだろうか。魔族の生態は知らないけど。
「もっと切って!」
 えーい! 人前で裸にされる屈辱、お前も味わうがいい!
 そう思ったら、空飛ぶハサミはじゃきじゃき今度はデデルの服を切り始めた。
「わー! やめろぉ!」
 やめません。尤も、おっさんの裸なんか見たくもないのですけども。
 はっと気がついて、胸を隠して思わずしゃがみ込んだ。
「ユマ様大丈夫ですか!?」
 髪の毛の拘束から解かれたエリオさんが駆け寄ってきた。
 なぜかライちゃんが、微妙に前かがみになっているエリオさんのお股に手を広げてくっついている。隠すならもう今更って感じもしなくもないのだが。黒い毛皮のパンツを履いているようでちょっと卑猥。
「どうでもいいけど、なんでライちゃんはそんな所に貼り付いてるの?」
「よくこんな状況でと呆れなくも無いけど、あんたの裸を目の前で見せられて息子さんが緊急事……むぐっ」
 リオちゃんが真っ赤になったエリオさんに顔面を掴れた。ら、乱暴な。
「そ、そんな説明はするなっ!」
 まあ後でゆっくりご本人に聞くとして。
 服はビリビリになっちゃったので、慌てて元通りになるようイメージすると、あっという間に二人とも元に戻った。
「なんかしらないけどチャンスです、エリオさん!」
「はい!」
 しゃきーんと剣を構えたエリオさんは、散切り頭で素っ裸になってしまったデデルの元に突っ込んで行った。
「精霊さん、ライちゃん! エリオさんの力になって!」
 思わず叫んだ言葉に、ライちゃんがでっかい魔獣に戻り、エリオさんが斬りかかる寸前のデデルに火を吹いた。精霊さんは青い光となってエリオさんの剣に吸い込まれた。
 剣が振り下ろされた。水の飛沫と共に。
「――――!」
 悲鳴が響いて、黒い霧みたいになってデデルの姿が消えた。
 血しぶきぶしゅーとか見なくてすんだけど、死んだのかな?
「やった……のか?」
 剣を振り下ろしたままの格好で、エリオさんは固まっている。
「エリオさん、勝ちましたねっ」
 エリオさんの背中に思わず抱きついたのはいいが……くるっとこっちを向いた顔がぽっと音を立てそうな勢いで赤くなったと思うと、突然ばったり倒れた。
 えええ? エリオさんっ、どうしたのよ?

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まいるどタブレット小説 Ver1.13