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魔女は空から△

2014/11/03 09:06

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 ああ、なんかムカムカする。
 胸焼けかな。やっぱシュークリーム七個食べてそのまま寝たからだろうか。せめて生クリーム入りじゃなくて全部カスタードのやつにすれば少しはマシだっただろうか……そういう問題じゃないかぁ。ロールケーキも美味しいのよねあの店。一本丸ごとにした方が良かった?
「うー、気持ちわるぅ」
 胃薬でも飲もうかなぁ。
 ん? もう朝? やたら明るいよね?
 え? 何でこんなに人の気配が? 私の部屋に人がって……。
 何だろう。草の匂い。
 風を感じる。
 目を開けて、とりあえず身を起こした。
「はぁ?」
 私の部屋ではない。そして屋外である。そんでもって何やら大勢の人に取り囲まれております。
 何、コレ。夢かな?
「おお、お目覚めになったようだ」
「いかんいかん、マトモに見られん、気がふれそうだ」
「皆のもの、お顔を拝見してはいかんぞ」
 ……ひどっ。
 夢でも見ちゃいけないくらい酷いブスだと言われるなんて。見ても死にはしないよ? じゃなくてっ!
「あなた達、誰? どこ、ここ?」
 そこそこカッコイイおっちゃん、お兄さん達だが、あまり見たことも無い様な格好をしてるね。なんかこう言っちゃいけないが……ボロ。酷い事に、顔の前に手を翳して、この不細工顔を見ないようにしているっぽい。
「ルドラの外れの名も無ぇ村です。貴女様が急に空からお現れになったので、ご様子を伺っておったのですが」
 ……ルドラってなんだ。ゲットだぜ~とか言いつつ玉に出し入れ出来ちゃう可愛らしいモンスターの名前かい? 名も無い村って、名前ぐらいつけろよ。
 で、私が空から降って来たってか?
 ムカムカが知らない間にひっこんだ。
 どんな夢だ……私って想像力豊かだったんだねぇ。いや、豊かだったら村の名前ぐらいついてるだろう。このいい加減さが私らしい。
 ふと自分の格好を見てみる。う~ん、何だこりゃ。
 白いネグリジェ……その一言に尽きる。しかもちょっとスケ具合がエロい。胸のところのリボンが凶悪だ。で、なんで同じ透けた布のマントやねん。あかんやろ、ブスがこんなん着たらあきまへんで。
 ……驚きのあまり関西弁交じりになってしまったよ。
「あああ、しかしなんとお美しい……!」
 かなりのイケメンのお兄さんが膝をかくんとついて頬を染めている。
「こら、お前ごときが見てはいかんと……ああ、たまらんなぁ」
 ちょっとちょい悪系おじさんも、途中からメロメロ声に。
 むか~っ。どんな新手の嫌がらせだ、コレ。
「天から降って来られたお美しいお方……きっと美巫女様がお探しの神聖の魔女様に違いない」
「おお、まさに。並ぶものなきこの美貌、そうに違いない」
「魔女様じゃ。聖なる魔女様じゃ」
 なぜか皆がひれ伏す。
 ふっ。
 幾ら夢でもこれは無いだろうよ、私。どこまで美化して欲しいんだ。
 そこまで言われると逆にキモイわっ。しかもさぁ、この村人さん達イケメン揃いだし、女の人も遠巻きに見てるが美人さんばっかだよ?
「このような世に見捨てられた醜男、醜女ばかりの汚い村ですが、よろしければごゆっくりしてお行きください。神殿へは連絡の鳥を飛ばし、迎えを遣していただきますゆえ」
 不細工女への嫌がらせですかい? イケメンと美女に醜男醜女とか言われるとムカっと来るんですが?
 え~い、こんな夢早く醒めろ。
 むにゅっと頬をつねってみた。酷い顔が更に酷くなったのか、何人かそれを見て失神した。
 むう、痛いぞ?
「そ、そのような事をなさっては、し、心臓が持ちませぬ!」
 美中年のおじさん、耳まで赤くなってハアハア言ってる……。
 ふと近くに池があるのに気がついて、姿を映そうと走った。
 ひょっとしたら驚くほどのすごい美女になってるとか?
 ありえる。それなら夢でも嬉しい。
 わくわくして覗き込みましたとも。ええ。
「……」
 いつものブスな私でした。うん、珍妙で妙にエロいコスプレを除いて。
 夢じゃないってのは、なんかじわじわ実感できた。
 ひょっとしてアレ?
 漫画や小説なんかでよくある、ほら。異世界にトリップ。
 で、私は寝る前になんて言っただろうか。勿論冗談だったんだけども。

『どこかにこの顔が美人だと言ってくれる様な国がないかな? もうどっかに行っちゃいたいよぉ~!』

 言いましたね。神様。
 ひょっとして聞き入れていただいたんでしょうかね?
 そんでもって、ここでは私のようなブスが美人で、この村人さんのようなイケメンイケジョが不細工なんですかっ。
「うそぉ~ん」
 なんか知らんが大変な事になってるようだ。
 しかも魔女って。魔法使えんの、私?

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