「とある隊員についてのレポート」

分類上はH.Kに属するのかも知れない。
なぞの秘密組織によって改造された後天的A.H。
その特異性は、昆虫類の遺伝子を持つ事からも容易に推測できる。

>今まで昆虫の遺伝子を組み込んだ例で成功
>した者はいないはずだが、サイズや構造に違
>いがありすぎてH・K手術も不可能だし。(本文より抜粋)

かなりイレギュラーな実験だったのだろう。
彼の普段の姿は、人間と変わりない。

そう、彼は変身(変態)能力を持つA.Hなのだ。
尤も、それはきっとH.K手術の限界から、その壁を埋めるべく施された
苦肉の策、とも取れるのだが。

蛹から成体への変態は、周知の通り体を丸ごと作り替える自然の驚異
である。蝶などがよい例で、蛹の中は差詰め「生命のスープ」とでも
呼べばよいのか、これが生きているとは信じがたい液体で満たされている。
その段階を経て、成体は以前とは全く違う姿形に生まれ変わるのだ。

このプロセスを擬似的に(一瞬で)踏むことで、昆虫の能力を人間に
付加させているらしい。(ある意味ウォレス博士の研究を一歩進めた、
新種のA.Hと言えるだろうか?)

変身後の彼の体は、キチン質で構成される外骨格の鎧で覆われる。
文字通り鎧で、耐熱・耐圧・耐ショックの優秀な装甲は、マグマの中でも
活動が可能といわれ、他のG.A.N.P隊員が踏み込めないような過酷なフィールド
での任務を得意とする。
また、昆虫譲りのその驚異的なパワーも特筆に値する。

羽の名残は残っているが、その形態上飛行は出来ない。
だがジャンプ力では哺乳類をベースにしたA.Hとは比べるべくもないだろう。
触角による感知能力も侮れない。

…備考…
彼は変身の際、一定の動き(ポーズ?)をとるのだが、これに果たして意味が
あるのか甚だ疑問である。また、変身後、何処からとも無く勇壮な音楽が流れ、
背後で七色の爆発が起こるのだが、こういったことに関して、我々常識人はあまり
深く考えてはいけないのかも知れない。

性格は、普通の人間より人間臭く、むしろ暑苦しい程の熱血漢。
言葉よりも感嘆符の付いた叫び声の方が多く、知能指数は低いようだ。
おそらく改造手術の影響などではなく、元からあまり物事を深く考えない
タチなのだろう。
G.A.N.P入隊のきっかけも、自分を生み出した(改造した)組織が、世界征服など
という大上段な思想を持ちながら、園児バス乗っ取り等のセコイ犯罪を繰り返す
事に嫌気がさし、自分はむしろ正義のヒーローの方が似合いなのではと激しく
思いこんだのが始まりらしい。全く持って熱い人物である。
その暑苦しさが災いしたのか、現在は極北基地勤務となっている。
北極の氷が溶けなければよいのだが…。
(20XX年某月、G.A.N.P調査委員会)

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