HOME

 

3:どっちが鈍感ですか?

2014/10/15 11:09

page: / 11

「すまないな。こんな事になって」
 片腕を吊った痛々しい姿で隣を歩いてる彼が小さく頭を下げた。
「なんでウォレスさんが謝るんですか? 本当にごめんなさい。私のせいで……」
「でも、君は仕事があるだろ?」
「大丈夫です……っていうか、そもそもシーケンスで行き詰っていたので、助けてもらおうとあなたを探してたんです。まさかその相手に大怪我をさせるとは思いませんでしたが」
「……手伝うのはいいけどモニタの文字は見えそうに無いよ」
 そう言ってるそばから、彼は段差につまづいた。慌てて受け止める。
 重っ。かなりスリムだが、155cmしか無い私からすれば190cmある彼は巨人に等しい。
 さすがに鼻と耳はいいので人などはよけられるみたいだが、ちょっとした段差や壁の出っ張りみたいな無機物は嗅ぎ分けようがない。どうも本気ではっきり見えていないらしい。
「ホントに目が悪いんですね。まさかここまでとは」
「昔は少しは良かったんだけどね……鼻と耳に頼るようになってから酷くなってきてたのが、ここ最近で急に進行して。来週あたり手術を受ける予定だったんだ。完全には治らないみたいだけど。コンタクトは体が拒否して使えないし」
 そんな人の眼鏡を壊してしまったのだ私は……ってか、よくこんな人に仕事させるな本部長。
「……ごめんなさいね。眼鏡……」
「事故なんだろ? いいよ、謝らなくても。部屋に帰れば予備もあるし」
 ああ……優しい。男ども、やきもちを妬く前に少しは見習うがよい。
「医局の先生にも命令された事だし、こうなったら一日私が眼鏡のかわりになります」
「いや、だから予備があると……」
 聞いてない聞いてない。第一どうやって取りに帰るつもりよ? まっすぐ廊下も歩けないくせに。
 心の中でちょっと悪い子ちゃんの私がガッツポーズしてるのだ。
 よっしゃ〜! って。
「どうせならデートしましょう。っていっても敷地内からは出られませんが」
「ええ? どうしてそうなる?」
「最近警備が厳しくなって、出動と帰還以外、時間までゲートを通れないからです。予備は今日は使えません。かといって仕事にもならないので。時間つぶしです」
 いや、それだけではないんだけども。
 どうせすでに他の女性スタッフを敵に回したんだから、少しくらいいい思いをしてもバチはあたらないと思うんだけどなぁ〜っていうのがホンネ。
「うう〜ん、でもなぁ……」
 おや、意外と煮え切らない男だな。
 私など眼中にないってこと?本当に見えてないけど……。
 ものすご〜く以外な言葉が返ってきたのはその後だった。
「君、あのマルカだろ?」
「はい。あのの意味はわかりませんが」
「……正直、俺は他の男性スタッフを敵にまわしたくは無いよ。まあ、もう遅いかもしれないけど」
 うう〜ん、ものすごく会話が噛み合ってないぞ。
「おっしゃってる意味をさっぱりわかりかねますが」
「自分では気がついてないとは聞いてたけど……本当なんだな」
「??」
「すごく可愛だけでも充分なのに、その上頭がいいなんて妬けるわね……って他の女の子が言ってたぞ。しかも周りの男たちも皆君の事を噂してるし。ここに来てから半年も経つのに滅多に研究室から出て来ないあたりがまたいいらしくて。足が超綺麗な幻の美人って」
「人をツチノコかなんかみたいに言わないでください。悪い冗談ですね。まさか、私のような赤毛のちんちくりんの事を美人だなどと噂してる男なんかいないと思いますが?」
「自分がモテるのを知らないんだな? っていうかさっき現に言い寄られてたんだろ? 確かに可愛いのに……有名な足がはっきり見えないのが残念だけど」
「……その言葉をそっくりそのままお返しします」
「???」
「自分が頭がいい上に、そのルックスなので、物凄くモテるって知らないんですか? 女性スタッフ皆がハートマークの目で見てますよ。先ほどの医局のナース達も誰が包帯を巻くかでかなりもめてました。私はすでに女性スタッフを敵にまわしてます」
「それこそ悪い冗談だ。俺なんかルックスなんて背が高いこと以外何一つ褒められる所なんか無いと思うぞ」
「……」
「……」
 あ、またつまづいた。
「……カフェでお茶でも?」
「いいですね」

page: / 11

 

 

HOME
まいるどタブレット小説 Ver1.13